子どもの分身となった人形たち・・・
「人形」・・・小さい子にとって、男の子でも、女の子でも大切な「もう一人の私」としての「人形」。
人形が出てくる本はとても多いのですが、そのなかで人形が心の通じ合うたいせつな友として展開される
ステキな作品をご紹介します。

	「ビロードうさぎ」 マージェリィ・ウイリアムズ　文 ウイリアム・ニコルソン　絵 石井桃子　訳 （童話館出版） （1400円+税）	おもちゃ箱の仲間たち、とりわけ機械仕掛けのおもちゃたちは、自分たち こそホンモノとじまんをしていました。 肩身の狭い木綿のビロードうさぎはホンモノになりたいと願っていました。 子ども部屋に古くから居る皮の馬が言います。 ”ほんとうのものというのは、身体がどんな風に出来ているかじゃない” ”ただの遊び相手でなく、とても長い間真から可愛がっていたとする。 すると、そのおもちゃはホントウのものになるのだ” ビロードうさぎはぼうやに可愛がられ、すり切れぼろぼろになります。 ある日坊やは大きな病気にかかります。 消毒のためビロードうさぎが捨てられる危機におちいります。 話しは思わぬ展開にすすみます・・ このステキなお話しに、岩波版とちがって、原書のままにニコルソンが 幻想的で色彩的なしっとりとした絵を付けています。 そしてうれしいことに50年の時を経て、石井桃子さん自身の手でほん訳が 新訳になってよみがえったのです。 表紙、中開き、本文、裏表紙をふくめて、とても美しい仕上がりの装丁で、 手にしたトタン、ファンタジーの世界に惹き込まれます。
	「かしこいビル」 ウイリアム・ニコルソン　作 松岡享子・吉田新一　訳 （ペンギン社） （1000円+税）	ウイリアム・ニコルソン・・そうです、「ビロードうさぎ」にステキな 絵を付けたイギリスの作家です。 この素晴らしい評判に、文・絵ともに手がけた絵本を依頼され、 この本が出来ました。 おばさんから遊びにおいでと手紙が着いて、あわてて準備するメリー・・・ たいせつな人形のビルをトランクに詰め忘れます。 涙にくれるビルは、その時すくっと立ち上がって・・・ ニコルソンはこのお話しを自分の娘メリーのためにつくりました。 だから一つ一つの場面に出てくる絵は、すべてメリーの現実のもので、 絵にたくさんの背景がつまっていてそれも楽しく見ることが出来ます。 （訳者がていねいな解説を最後に付けています） 子どもと人形のあたたかい関係が、絵本全体に満ちあふれ、くつろいだ 伸びやかさの絵がイギリスでも高い評価を受けています。
	「まいごになった おにんぎょう」 A．アーディゾーニ　文 E.アーディゾーニ　絵 石井桃子　訳 （岩波の子どもの本） （800円+税）	ふとしたことからスーパーの冷凍庫に落ちたお人形・・・ とても冷たく寒いところに過ごさなければならなくなりました。 ところが女の子がこのお人形を見つけます。 でもお店のものに触っていけないと言われています。 女の子は自分に出来ることをせっせとし始めました・・・ お人形の気持ち、女の子のやさしい気持ちが伝わってきます。 だからこの話しの普通のハッピーエンドが、とてもうれしくなるのです。 アーディゾーニはイギリスの国民的人気をもつイラストレータで、 絵本では、ステキな冒険ものがたり「チムシリーズ」が有名です。 この本は「チムシリーズ」とはおもむきが違いますが、それもそのはず 息子の夫人がテキストを作って、それにアーディゾーニが絵を付けたのです。
	「くまの テディ・ロビンソン」 さく・え ジョーン・G・ロビンソン やく 坪井郁美 （福音館書店） （1400円+税）	ぬいぐるみのくまのテディ・ロビンソン・・・ デボラのお気に入りのくまでした。 お日さまのかがやく日の午後、木の下でおままごと・・・ そのとき、ドアがどんどんとなって、デボラは駆け出します。 ところがいつまで経っても帰ってきません。 テディ・ロビンソンはひとりぼっちで夜を明かします。 いったいなにが起きたのでしょう・・・ やさしく楽しい口調のお話しが７編収められています。 ぬいぐるみの人形と子どもの、なんともやさしさに満ちたふれあいと、 思わぬ事件の連続・・心あたたまる、気持ちのいいお話しです。 テディ・ベア誕生100年を記念して出版されましたが、限定復刊なのが 残念です。
	「人形の家」 ルーマー・ゴッデン　作 瀬田貞二　訳 （岩波少年文庫） （640円+税）	上等な木でつくられたオランダ人形トチーは、エミリーとシャーロットに 大切にされ、しあわせな日々を過ごします。 トチーは家族がキチンと過ごせる「人形の家」が出来るように強く願い、 みんなもそれに応えようとします。 ところが思いがけない事件が起こり、話しは劇的に展開します・・・ 人間と同じように悩んだり、よろこんだりする人形の感情と強い意志が 伝わってきます。 ドールハウスの細やかな描写、いろいろな事件や奇跡は、「真実」という とてもたいせつな問題を私たちに突きつけ、やさしく読める子ども向けの 本でありながら、大人にも美しい感動を呼び起こします。 まっすぐなメッセージが聞こえてくる、純粋で美しい作品に ぜひ触れてみてください。 （同名の本にイプセンのものがありますが、思春期に読む別の作品です）
	「ふわふわくんと アルフレッド」 ドロシー・マリノ　文・絵 石井桃子　訳 （岩波の子どもの本） （800円+税）	みんなの大好きな「くんちゃんシリーズ」を描いたドロシー・マリノの 作品で、おなじようにクマが主人公です。 ふわふわくんというクマの人形は、アルフレッドと赤ちゃんの時から いっしょでした。 その時はふわふわくんより小さかったのに、今ではぐっと大きくなって・・ そして新しいお人形がやってきて、今度はそれに夢中！ しばらくガマンをしていたふわふわくんは、ある時決然と強い意志を アルフレッドに示します・・・ ドロシー・マリノはちいさい頃からクマのぬいぐるみが大好きで、 「もう一人の私」になったぬいぐるみの、ハッキリとした気持ちが 伝わるアルフレッドの姿を自分に重ね合わせているようです。

★さるのオズワルド
エゴン・マチーセン　作　松岡享子　訳
	リンゴが大好きなさるのオズワルド・・友だちと楽しく遊んで過ごします。 ところがボスざるのいばりやが現れてさあ大変、のみ取りなどご機嫌をとらなければなりません。 ついにガマンが出来なくなったオズワルドは・・ オズワルドをとおしてさるの世界が面白く描かれています。 そして「ことば」を使って意志を伝えることの大切さを教えてくれます。文中に「おっと、まちがい」が楽しくくり返され、おかしくって子どもの心がおどります。 マチーセンは「あおい目のこねこ」で知られ、画家の目で見た芸術的な質を大切にした作家であり、東京子ども図書館の松岡享子さんが楽しいほん訳をしています。
こぐま社 1300円＋税

★にほんむかしばなし　かにむかし
木下順二　文　清水崑　絵
	昔話の「かにの仇討ち」などを元にしてつくられたものです。 ”はよう芽をだせ　かきのたね、ださんとはさみで・・” こんなことばのくり返しで、カニは柿のたねを育てます。 立派に実がなった柿の種をたべようと思ったら、サルが柿をカニに投げつけて・・・ ここからきび団子につられて集まった仲間たちの仇討ち話が、テンポ良く展開されます。 ”かにどん、かにどんどこへいく” ”さるのばんばへあだうちに” このことばのくり返しも心地よく、子どもたちはとりこになってしまいます。 昔話の絵本ですぐれたものは多くありませんが、この作品のお話しの展開、木下順二のくり返しことばの巧みさ、清水崑の楽しい絵は昔話絵本の定番としてどの家庭にも根付いてきました。 小型本の他に大型本もあって読みきかせに配慮されています。
岩波書店 640（大型判1600）円＋税

★ひとまねこざるときいろいぼうし
H.A.レイ　文・絵　光吉夏弥　訳
	”これは、おさるのジョージです。” ”こまったことに、とてもしりたがりやで、ひとまねがだいすきでした” おさるのジョージシリーズ（ひとまねこざるシリーズ）は、 こんなことばで始まり、さてなにが始まるかとワクワクします。 この本はこのシリーズの最初の本で、アフリカに住んでいたジョージが、好奇心いっぱいなことがわざわいして捕まって都会へ・・ さっそく楽しく愉快ないたずらが始まります。 話しを聞く子どもたちは、自分がおさるのジョージになった気分で話しの展開に引きこまれ、世界中の子どもたちがこの名前を知らないことがないほどに人気になりました。 文句なしにおもしろいこの作品は、テキストだけでなく、H.A.レイの親しみやすい絵も人気の原因でしょう。
岩波書店 1420円＋税

★ひとまねこざるシリーズ（おさるのジョージシリーズ）
H.A.レイ　文・絵　光吉夏弥　訳　（岩波書店）
ひとまねこざる （1300円+税）	じてんしゃにのる ひとまねこざる （1300円+税）	ろけっとこざる （1300円+税）
動物園を抜け出したジョージは 街で大騒ぎして映画俳優に・・	自転車に乗るのが得意のジョージは 新聞配達からサーカス小屋へ・・	科学博物館の館長さんから、手紙を もらったジョージは、なんと宇宙へ・・
		このシリーズは 「ひとまねこざると きいろいぼうし」 につづいてワクワクするお話しが シリーズで展開され、そのどれもが 子どもたちを魅了しました。 発行の年代順に並べましたが その順に読み進むことにこだわる必要は ありません。 またこのシリーズはレイ夫妻共同の作品 ともいえますが 「たこをあげるひとまねこざる」 「ひとまねこざるびょういんへいく」は マーガレット・レイ夫人　文 H.A.レイ　絵　と明記されています。
たこをあげる ひとまねこざる （1700円+税）	ひとまねこざる びょういんへいく （1400円+税）
目の前にみえる大きな家にウサギ小屋 凧にのったジョージがようやく降りて	プレゼントにもらったパズルを のみこんだジョージは大騒ぎ・・

★どうぞお店（絵本の店・星の子）にお越しください。地図はこちらへ

★ご注文やご連絡はメール　　hoshinoko1@nifty.comで

03-3727-8505（tel/fax）でもどうぞ。　　　（「特定商取引に関する法律」に基づく表示）

絵本の店・星の子トップメニューへ

★おすすめの良い絵本をつぎつぎに紹介していきます。ご期待下さい。
★いま注目の本・話題の本は「星の子・注目の本」のページへ
★良い絵本・児童書を定期的にお送りします。「星の子・子どもの本定期便」のページへ